ドラッカーに学ぶ「イノベーションとは何か?」

イノベーションは「技術革新」「新機軸」と訳されることもありますが、意味を知ると、いずれも不正確なようです。本稿ではピーター・ドラッカー先生の著作から、イノベーションに関する部分を抜粋・引用しました。その理論と実践を理解する一助になればと思います。

◆イノベーションとは何か

イノベーションとは、物事を新しい方法で行うことによって資源のもつ富の創出能力を増大させることである。イノベーションは、たとえ発明から生まれることが多くとも、発明と同義ではない。それは経済的な能力の増大を意味する。資源を生み、資源を利用することである。したがって、イノベーションは企業の仕事である。

「テクノロジストの条件」の「第8章:技術をマネジメントする」より。
初出文献は、バックマン編「労働・技術・生産性」(1974年)。

イノベーションが生み出すものは、単なる知識ではなく新たな価値、富、行動である。

「テクノロジストの条件」の「第10章:イノベーションのための組織と戦略」より。
初出は「マネジメント」(1974年)。

◆イノベーションは企業の責務

現代というイノベーションの時代において、イノベーションを行えない組織は、たとえ今確立された地位を誇っていたとしても、やがて衰退し消滅するべく運命づけられる。

「テクノロジストの条件」の「第11章:イノベーションのための組織と戦略」より。
初出は「マネジメント」(1974年)。

◆七つの機会

イノベーションの機会は、産業の内部に四つある。第一が予期せぬこと、第二がギャップ、第三がニーズ、第四が産業構造の変化である。イノベーションの機会は産業の外部にも三つある。すなわち、第五が人口構造の変化、第六が認識の変化、第七が新知識である。

「テクノロジストの条件」の「第12章:イノベーションの機会はどこにあるか」より。
初出は「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌(1985年)。

【メモ】
この七つの機会は、「打率順」なのだそうである。
多くのイノベーションが、「予期せぬ成功」なのだ。

ベンチャーが成功するのは、予想もしなかった市場で、予想もしなかった顧客が、予想もしなかった製品やサービスを、予想もしなかった目的のために買ってくれるときである。

「ドラッカー 時代を超える言葉」より。
引用元は「イノベーションと起業家精神」。

予期せぬ成功ほど、イノベーションの機会となるものはない。だが、予期せぬ成功はほとんど無視される。困ったことに、存在さえ否定される。

「ドラッカー 時代を超える言葉」より。
引用元は「イノベーションと起業家精神」。

◆「うまくいっていない」のもチャンスの一つ

まずいえることは、需要が増大しているにもかかわらず利益があがらなければ、技術の変化が必要であり、かつその機会があるということである。確実に言えることは、今日の技術が不十分、不経済、かつ不適当ということである。

「テクノロジストの条件」の「第8章:技術をマネジメントする」より。
初出文献は、バックマン編「労働・技術・生産性」(1974年)。

さらには、「業界ではいかなる事態が恐れられているか。今は起こりえないこととしているが、やがては起こるであろうし、もし起これば大変であるとみなが知っていることは何か。製品、技術、その他市場と顧客に提供しているもののうち適切でなく、十分役に立っていないものは何か」を問わなければならない。

「テクノロジストの条件」の「第8章:技術をマネジメントする」より。
初出文献は、バックマン編「労働・技術・生産性」(1974年)。

◆「昨日の廃棄」がイノベーションを可能にする

イノベーションや自己革新ができない組織に共通する問題が、古いもの、老朽化したもの、もはや生産的でないものを捨てられないことである。それどころか、それらのものに最高の資源、特に優れた人材を投入していることである。
 老廃物を排出できない身体は、みずから毒を仰いでいるに等しい。イノベーションを行えるようにするうえで必要なことは、もはや生産的でなく、もはや貢献できないものを組織的に廃棄することである。

「テクノロジストの条件」の「第8章:技術をマネジメントする」より。
初出文献は、バックマン編「労働・技術・生産性」(1974年)。

イノベーションを行う組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。

「テクノロジストの条件」の「第10章:イノベーションのための組織と戦略」より。
初出は「マネジメント」(1974年)。

イノベーションを行うには、イノベーションに挑戦できる最高の人材を自由にしなければならない。同時に、資金を投入できるようにしなければならない。いずれも、過去の成功や失敗、特に惜しくも失敗したものや、うまくいったはずのものを廃棄しないかぎり不可能である。それらのものの廃棄が原則となっていれば、誰もが進んで新しいものを求め、起業家精神をかきたて、みずから起業家となる必要を受け入れるようになる。
 これが第一の段階である。いわば組織の衛生学である。

「テクノロジストの条件」の「第11章:既存の企業におけるイノベーション」より。
初出は「イノベーションと企業家精神」(1985年)。

企業、大学、政府機関のいずれであれ、昨日を組織的に捨てることのできる組織は、創造性など気にする必要はない。組織全体が新しいものに貪欲になるため、マネジメントの仕事は、数ある優れたアイデアのなかから最も貢献し、最も成功しそうなものを選び出すこととなるからである。

「テクノロジストの条件」の「第8章:技術をマネジメントする」より。
初出文献は、バックマン編「労働・技術・生産性」(1974年)。

◆イノベーションはシンプル

成功したイノベーションは驚くほど単純である。まったくのところ、イノベーションに対する最高の賛辞は、「なぜ、自分には思いつかなかったか」である。

「プロフェッショナルの条件」part4・6章「イノベーションの原理と方法」より。
初出は「イノベーションと起業家精神」(1985年)。

イノベーションの成果は、普通の人間が利用できるものでなければならない。多少とも大きな事業にしたいのであれば、さほど頭のよくない人たちが使ってくれなければ話にならない。つまるところ、大勢いるのは普通の人たちである。組み立て方や使い方のいずれについても、凝りすぎたイノベーションは、ほとんど確実に失敗する。

「プロフェッショナルの条件」part4・6章「イノベーションの原理と方法」より。
初出は「イノベーションと起業家精神」(1985年)。

あまりに大がかりな構想、産業に革命を起こそうとする計画はうまくいかない。多少の資金と人材をもって、限定された市場を対象とする小さな事業としてスタートしなければならない。

「プロフェッショナルの条件」part4・6章「イノベーションの原理と方法」より。
初出は「イノベーションと起業家精神」(1985年)。

◆イノベーション担当部門は独立させよ

起業家的な事業は既存の事業から分離して組織しなければならない。起業家的な事業を既存の事業に携わる組織に行わせるならば、失敗は目に見えている。
 その理由の一つは、既存の事業は、それに責任をもつ人たちから膨大な時間とエネルギーを奪うからである。

「テクノロジストの条件」の「11章:既存の企業におけるイノベーション」より。
初出は「イノベーションと企業家精神」(1985年)。

既存の企業が起業家的であるためには、一人の人間あるいは一つの単位組織に、イノベーションにかかわる全責任をもたせなければならない。大企業ではトップマネジメントにこの責任をもたせている。それほど大きくない企業では、ほかの仕事と兼務させてもよい。巨大企業ともいうべき大企業では独立した部門や子会社を設立している。

「テクノロジストの条件」の「11章:既存の企業におけるイノベーション」より。
初出は「イノベーションと企業家精神」(1985年)。

最も重要なタブーは、管理的な部門と起業家的な部門を一緒にすることである。起業家的な部門を既存の管理的な部門の下においてはならない。既存の事業の運営、利用、最適化を担当している人たちにイノベーションを任せてはならない。既存のもののための原理や方法を変えることなく起業家的であろうとしても無理である。失敗は必至である。片手間に起業家であろうとしてもうまくいかない。

「テクノロジストの条件」の「11章:既存の企業におけるイノベーション」より。
初出は「イノベーションと企業家精神」(1985年)。

◆得意分野に集中せよ

いかなる組織であろうと、得意分野以外でイノベーションを行おうとしても成功することはない。(略)
 既存の企業がイノベーションを行うことができるのは、市場や技術について卓越した能力をもつ分野においてのみである。新しいものは必ず問題に直面する。そのとき事業に通暁していなければならない。

「テクノロジストの条件」「11章:既存の企業におけるイノベーション」より。
初出は「イノベーションと起業家精神」(1985年)

複数の分野でイノベーションを手がける人は稀である。エジソンは体系的にイノベーションを行なっていったが、電気の世界においてだけだった。シティバンクのような金融界のイノベーターが医療のイノベーターを手がけることもない。

「テクノロジストの条件」の「第12章:イノベーションの機会はどこにあるか」より。
初出は「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌(1985年)。

イノベーションは、馴染みのない分野で起こる。

「テクノロジストの条件」の「第8章:技術をマネジメントする」より。
初出文献は、バックマン編「労働・技術・生産性」(1974年)。

【編者私見】
「イノベーションが馴染みのない分野で起こる」ということは、一見、「得意分野に集中せよ」との見解と矛盾する。
得意な技能を活かしながらも、未開拓の領域に挑めということか?
あるいは、異なる分野の知識を、自分の得意分野に当てはめよ、ということか?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする