よく聞くビジネス用語「スクラップ・アンド・ビルド」ってどんな意味?

新聞やネットの流通・小売業界関係のビジネス記事でよく見かける「スクラップ・アンド・ビルド(英語 scrap and build)」。事業者の利益率を改善するというメリットがある一方で、”買い物難民”や”新たなシャッター商店街”を生むといったデメリットもあるようです。

◆スクラップ・アンド・ビルド?

新聞やネットの流通・小売業界関係のビジネス記事でよく見かける「スクラップ・アンド・ビルド」。

『T社は店舗のスクラップ・アンド・ビルドを進めている』

『M社は店舗事業においてスクラップアンドビルドを実施し、収益性が向上した』

◆スクラップ・アンド・ビルドの意味

《本来の意味》
工場設備や組織などで、採算や効率の悪い部門を整理し、新たな部門を設けること

出典三省堂 大辞林

※ scrap (取り壊す)と build (建設する)より。

新聞やネットでは、特に流通・小売業界関係の記事で使われることが多い。

《流通・小売業界での意味》
老朽化した店舗や小規模店舗を閉店し、同じ商圏や地域で大規模の新店舗に置き換えること

※狭義では”同じ商圏内”でスクラップ・アンド・ビルドは行われる。

◆簡単に言うと

スクラップ・アンド・ビルドは、一定の店舗数に達したチェーン店がよく使う手法である

営業成績のいい店舗は拡大し、さらに商品を充実させる

※主に改装や増床を行ない、さらなる売上アップを見込む。

競争力を失った店舗は取り壊し、新しいスタイルの店舗にする

出典nikkei BPnet

※広義では、その商圏から撤退し、別の利益の見込める商圏に出店することもスクラップ・アンド・ビルドに含まれる。

つまり、採算の取れない事業・店舗をさっさと取り壊すのが「スクラップ」、採算の取れるものをガンガン作っていくのが「ビルド」です

◆スクラップ・アンド・ビルドを行う”3つ”のメリット

1. 顧客ニーズの変化に素早く対応できる

出典流通用語辞典

※店舗規模、店舗構造などを柔軟に変化させることができる。

2. 商圏内の客層の変化に素早く対応できる

※少子高齢化により客層が変わる、街の開発が進み人の流れが変わるといった変化にスピード感を持って対応できる。

3. 利益率の悪化が改善される

※シェアの拡大が見込める場合もある。

◆流通・小売業界ではスクラップ・アンド・ビルドが主流

生き残りをかけて、このスクラップ・アンド・ビルドが行われている。

コンビニエンスストア業界では、スクラップ・アンド・ビルドが当然のように行われています

※コンビニ業界は競争が激しく、常にライバル店は新しい設備を持った店舗をともない良い立地へ出店(移転)する。この争いに対応できなくなった古い店舗は閉鎖して、新しい立地・店舗に立て替えて対応していく必要がある。

不採算店を撤退「スクラップ」し、人口が増える地域に新店オープン「ビルド」することで、結果的にトータルの店舗数は拡大します。利益を伴う成長を目指すためには、スクラップ・アンド・ビルドが必要なのです

流通・小売業界はスクラップ・アンド・ビルドによって売り上げの維持を図っているのです

◆スクラップ・アンド・ビルドを前提に出店することもある

外食チェーン業界などでは、店舗を完全にプレハブ化して、ある立地から撤退するときは店を分解し、次の立地で組み立て直すということまでやっている

※広義でのスクラップ・アンド・ビルドの場合。チェーンストアの多くは、建築費のコストダウンに努めている。地方の郊外のロードサイド店で、プレハブによる店舗(鉄筋コンクリートでなく軽量鉄骨造り、壁は塗るのではなくサイディング)を多く見かけるのはこのため。

スクラップ・アンド・ビルドは、”瞬間的な集客に費用と知恵を使っている”とも言える

◆そしてスクラップ・アンド・ビルドといえば…

イオンの前身は三重が地盤のスーパー岡田屋。岡田屋が関西基盤のスーパー数社を合併したジャスコが全国に総合スーパーの出店攻勢を重ね拡大。

以後、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返し現在のイオングループの礎となる。

イオンの前身、岡田屋には家訓に『大黒柱に車をつけよ』というものがあった

※「家を支えている大黒柱は、本来動かしてはならないものだが、いつでも車をつけて家を動かせるようにしておけ」という意味。すなわち、時代・お客の変化、人の流れに柔軟に対応し、店を移動し構えよ、というスクラップ・アンド・ビルドの精神に通じる。

イオンはスクラップ・アンド・ビルドを心掛けて成長してきた

◆スクラップ・アンド・ビルドとイオンモール

イオンのスクラップ・アンド・ビルドの代表例とも言える。

イオンは、買い物客が回遊できるように専門店の連なるモールから成る「郊外型ショッピングセンター」を建設し、次世代業態のスーパーセンターへの転換を進めている

イオンの成功要因は、旧来型の総合スーパー(GMS)を計画的にスクラップし、新たにこの「郊外型ショッピングセンター」をビルドして、店舗の軸足を移した点にある

出典nikkei BPnet

※GMS=ゼネラル・マーチャンダイズ・ストアの略。

◆ただし、スクラップ・アンド・ビルドにはデメリットもある

例えば、昭和時代に商店街と多くの軋轢を生みながら出店した各地の大型スーパー。安さを売りにした大型スーパーとの競争の中で各地の商店街は壊滅状態となった。

しかし、その後の不採算店舗のスクラップ・アンド・ビルドの影響で大型スーパーが撤退。そのため、各地で”買い物難民”を生んでいる例もある。

大手小売業の多くは、現在、地方を中心に不採算店舗を多く抱えている。企業の生き残りを目指すなら、不採算店舗の閉店以外に選択肢はない。しかし、閉店のため”買い物難民”という新たな問題が起きている

※”買い物難民”発生の流れ

① 地方に大型店が出店
② その影響で地域商業が全滅
③ 大型店が不採算で撤退
④ その地域の人たちが日々の買い物すらできなくなる

東京の多摩ニュータウンが代表事例。

アメリカでは、ウォルマートが地代の安い郊外に過剰に展開した結果、ニューメキシコをはじめ多くの都市の中心部が壊滅的な空洞化に陥った。

日本でも同様のことが起きているとの指摘がある。

スクラップ・アンド・ビルドの一環として、地方都市の「郊外」に大型総合スーパー・ショッピングモールが新規出店することにより、地方都市の「中心部」で空洞化が起き、”新たなシャッター商店街”を量産している

出典週刊新潮2010年12月30日・2011年1月6日新年特大号

◆というわけで

◆参考リンク

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